こんにちは、ツバサです。
ささげ(撮影・採寸・原稿)は「写真を撮って寸法を測るだけ」と思われがちですが、実際にストップウォッチで計ると別の現実が見えてきます。採寸だけで1商品15分、20商品で5時間。撮影とレタッチ、原稿作成まで含めると丸1日が消えます。
この記事では、ささげ業務の工数を工程別に分解し、「なぜこんなに時間がかかるのか」「なぜ経営層に伝わらないのか」を数字で整理しました。
工程別にかかる時間を計算する
ささげ業務は3つの工程から成りますが、それぞれに「見えない前後の作業」が付随しています。工程ごとの所要時間を分解すると、1商品あたりの合計が20〜30分になる理由がわかります。
採寸:1商品15分
商品を箱から取り出し、計測箇所を確認し、メジャーで計測し、数値をスプレッドシートに記録し、商品を梱包して戻す。この一連の流れで15分かかります。アパレルであれば着丈・身幅・肩幅・袖丈など7〜10箇所を計測するため、1箇所1〜2分としても計測だけで10分前後です。
EC向けリユース品のコンサルタントが公開したnote記事では、「採寸15分×20点=300分(5時間)」という実測値が報告されています。20点で丸半日が消える計算です。
N ささげ業務の効率化&高品質化 - onyourside_llc note.com/onyourside_llc原稿作成:1商品10〜15分
BASEの調査によると、注文が継続的に入るショップでは商品説明が650〜1,000文字程度記載されている傾向があります。1商品あたり500〜800字の原稿を書くとして、慣れた人でも10〜15分はかかります。20商品なら3〜5時間。原稿用紙に換算すると12〜20枚分です。
外 ECのささげ業務(撮影・採寸・原稿)とは? - BASE U baseu.jp撮影+レタッチ:1商品10〜20分
商品1点あたり3〜5カット撮影し、背景処理やリサイズを行うと10〜20分が標準的な時間です。オープンロジは「5カット撮影で10分」と試算しており、月60アイテムで合計10時間の撮影時間になると報告しています。
外 ささげ業務のコストについて解説 - オープンロジ service.openlogi.com参考として、ささげ代行大手のスクロール360は「1ブースあたり75〜100SKU(1SKU 7〜8カット)を撮影からレタッチ、採寸、ライティングまで処理可能」と公開しています。これはプロのチーム体制での数字で、1人で内製する場合とは処理効率が大きく異なります。
外 EC通販サイトのささげ業務とは?代行業者の選び方 - スクロール360 www.scroll360.jp「見えない工数」が経営層に伝わらない
ささげの工数が過小評価される根本的な原因は、経営層がこの作業を自分の手でやったことがないからです。リユース事業のコンサルタント・近藤俊之氏はnoteで「経営者が自分でささげの作業をしたことがないので、生産性を把握していない」と指摘しています。
N リユースECにおける「ささげ業務」の現場の悩み - リユース経営研究所 note.com/reantique表に出ている作業(カメラのシャッターを押す、寸法を測る)だけを見ると「すぐ終わるでしょう」と感じるのは自然です。しかし、リユースの場合は撮影前にクリーニングが必要だったり、付属品のチェックやタグの確認が必須だったりと、「撮影以外」の準備工程が重い。この部分が見えていないと、工数の見積もりが実態の半分以下になります。
厚生労働省の「令和6年雇用動向調査」によると、卸売業・小売業の離職者数は年間142.7万人で全産業中最多です。離職率は15.1%で全産業平均(14.2%)を上回っています。ささげ担当に限った統計はありませんが、EC現場の人手不足と高い離職率は公的データからも裏付けられます。
外 令和6年雇用動向調査結果の概要 - 厚生労働省 www.mhlw.go.jp兼務体制が生産性を下げる構造
ささげ担当が店舗の接客やカスタマーサポートと兼任している現場は少なくありません。問題は、ささげのような集中力を必要とする作業が、中断のたびに大幅に効率が落ちることです。
近藤俊之氏はnoteで「接客とEC出品の兼任では、どちらの業務にも集中できない」と指摘しています。お客さんが来れば接客を優先するのは当然ですが、そのたびに撮影のセッティングが崩れ、採寸の途中で手が止まります。1回の中断で復帰に5〜10分かかるとすれば、1日3回の中断で30分のロスです。
もうひとつの問題は「どちらの業務で評価されるのか」が曖昧なこと。接客の成果は売上に直結するため目に見えやすいですが、ささげの成果は「出品されなかった場合の損失」という見えにくい数字です。結果として、ささげは後回しにされやすい構造になります。
チェリーピッキングが起きる理由
出品数で評価する制度のもとでは、作業が簡単な商品ばかり優先的に処理される「チェリーピッキング」が起こりがちです。たとえばリユースEC企業で、指輪やネックレスの出品ばかりが進んで、バッグやコート類が倉庫に滞留するケースがあります。
指輪は採寸が2〜3箇所で済み、撮影も1〜2カットで完結します。一方、バッグは外観・内側・金具・底面と撮影カットが多く、状態説明の原稿も長くなります。同じ「1点出品」でも工数が3倍以上違うのに、評価上は同じ1点として扱われる。これでは作業が軽い商材に偏るのは当然です。
対策として、商品カテゴリごとに難易度の重み付けを設定し、「バッグ1点=指輪3点相当」のような換算で評価する仕組みが必要です。
工数を経営層に伝えるための数字の見せ方
経営層にささげの工数を説明するとき、「大変なんです」では伝わりません。以下の表のように、月間SKU数から逆算した工数を提示し、「この人数では物理的に処理しきれない」ことを数字で示すのが有効です。
| 月間SKU数 | ささげ合計(30分/商品) | 必要人日(8h/日) | 必要人数(月20営業日) |
|---|---|---|---|
| 50 SKU | 25時間 | 3.1日 | 0.2人(兼務可) |
| 100 SKU | 50時間 | 6.3日 | 0.3人(ギリギリ兼務) |
| 200 SKU | 100時間 | 12.5日 | 0.6人(専任が必要) |
| 500 SKU | 250時間 | 31.3日 | 1.6人(複数人体制) |
※ 1商品あたりの所要時間は撮影+採寸+原稿の合計30分で計算。リユース品はクリーニング工程が追加されるため、40分前後を見込む必要がある
200SKUを超えると、ささげ専任が1人いても足りなくなります。500SKUなら2人体制か、一部を外注に回すハイブリッド運用が前提になります。この数字を経営層と共有するだけで、人員配置の議論が格段にスムーズになるはずです。