こんにちは、ツバサです。
ECの仕事をしていると、外注先やバイトに作業を頼む場面が結構ある。レタッチの依頼、商品情報の入力、撮影データの整理。頼んだはずなのに、数日経っても何も返ってこない。催促するのも気まずい。でも締切は迫る。
「なんで進まないんだ」とイライラしていた時期がある。でもある日、上司にこう言われた。
「お前、それ止めてるの自分じゃないか?」
この記事では、自分がボールを持ちすぎていたことに気づいてから、外注先やバイトとの仕事の回し方がどう変わったかをまとめている。
仕事を頼んだのに全然進まない、あの現象
外注先にレタッチ用の画像データを送った。バイトに商品登録のリストを渡した。頼んだ。あとは待つだけのはずが、3日経っても何も返ってこない。
こういうとき、頭の中では「相手が遅い」「やる気がないのか」と考えがちだ。でも、冷静に自分のメールやチャットの履歴を見返してみると、実は違うことがある。
外注先から「この写真、背景は白抜きでいいですか?」と質問が来ていた。それに自分が返事をしていなかった。バイトが「このカラム、どの項目を入れればいいですか?」と聞いてきていた。「あとで見る」とだけ返して、そのまま忘れていた。
つまり、相手は自分の返事を待っていた。止めていたのは自分だった。
上司に言われて気づいた「ボールを持ちすぎている自分」
仕事のやりとりでは、「次に動くべき人」が常にいる。メールを返す番、確認を出す番、指示を送る番。テニスやサッカーで言えば、ボールを持っている人だ。
ある時期、自分は毎日忙しいと感じていた。朝から晩までバタバタして、でも振り返ると何が終わったのかよくわからない。そんな日が続いていたとき、上司にこう言われた。
上司
「お前、忙しい忙しい言ってるけど、実際に手を動かしてる時間ってそんなに多くないだろ。忙しいんじゃなくて、やってないことが頭に残ってるだけだ」
図星だった。思い当たる節がありすぎた。
土曜日のメールの話
たとえば、休みの土曜日に仕事のメールを見てしまったことがある。自分はリモートワークができる日もあるので、家にパソコンがある。ふとメールを開くと、外注先からの確認メールが1通。返信は2〜3分で済む内容だった。
でも、「休みだし、月曜に返せばいいか」と閉じた。
結果どうなったか。土曜の午後も、日曜の夜も、頭の片隅にずっとそのメールが残っていた。「あれ返さなきゃ」がうっすらと張り付いて、完全にはリラックスできない。そして月曜の朝、改めてメールを開いて、「あれ、何の件だっけ」と文脈を思い出すところからやり直す。
土曜にすぐ返していれば2分で終わっていた。月曜に回したことで、2日間ずっと心理的な荷物を背負い、月曜の朝にもう一度文脈を理解し直す時間を使った。トータルのコストは何倍にもなっている。
上司の言葉を借りれば、「忙しいと感じているのは、やってないタスクが頭に残っているからだ。すぐ片付ければ忙しくないのに、後回しにするから忙しく感じるだけ」ということだった。
100点を目指すな、50点で返せ
もう一つ、上司に言われて衝撃を受けたことがある。
上司
「100点のものは求めてない。50点でいいからボールをパスしろ」
正直、最初は抵抗があった。中途半端なものを出したら怒られると思っていたからだ。「ちゃんと調べてから返そう」「きちんとまとめてから送ろう」。そうやって100点を目指しているうちに、3日、5日とボールを持ち続けていた。
でも上司の意図はこうだった。50点の段階で出してくれれば、方向が合っているかその場で確認できる。100点まで作り込んでから「方向が違う」となったら、その時間が全部無駄になる。
これは外注先やバイトに仕事を頼むときも同じだった。「完璧な指示書を作ってから送ろう」と思って3日寝かせるより、まず50点の指示で動いてもらって、走りながら修正するほうがはるかに速い。
自分が止めていたパターンを洗い出してみた
上司に指摘されてから、自分がどんな場面でボールを持ちっぱなしにしていたかを振り返った。出てくる出てくる。
「あとで見る」で放置していた確認依頼
外注先やバイトからの「これでいいですか?」という確認。忙しいときに来ると「あとで見る」と返してしまう。でも「あとで」はだいたい来ない。翌日にはもう忘れている。相手はその間、ずっと手が止まっている。
指示があいまいなまま投げていた
自分では頼んだつもりでも、相手には「何をどこまでやればいいのか」が伝わっていなかった。相手は聞きたいけど聞きづらい。結果、何も動かないまま時間だけが過ぎる。レタッチの依頼で「きれいにしてください」だけ送って、仕上がりに不満を持っていた時期がまさにこれだった。「レタッチの依頼で失敗しないコツ」の記事に書いた内容は、半分以上が自分の失敗体験だ。
「調べてから返そう」で1週間
外注先から仕様について質問が来た。即答できなかったので「確認して折り返します」と返した。そこまではいい。でも確認するのを後回しにして、気づけば1週間。その間、外注先の作業は完全にストップしていた。
即答できないなら、せめて「確認に○日かかりそうです」と伝えるだけで、相手の心理的な負荷はまったく違っていたはずだ。
「すぐ返す」を意識しただけで変わったこと
上司の指摘を受けてから、意識的に変えたことが3つある。
2〜3分で終わるものはその場で返す
確認依頼、簡単な質問、「はい」か「いいえ」で済む判断。こういうものは、他の作業を中断してでもその場で返すようにした。一時的に今やっている作業の流れが切れるけれど、ボールを手放す安心感のほうがはるかに大きい。
完璧じゃなくても「今わかっていること」を先に返す
全部の情報が揃っていなくても、「現時点ではこういう方向で考えています」「ここまでは確定、残りは○日までに回答します」と返す。いわゆる一次回答だ。これだけで、相手は「放置されているわけじゃない」とわかるし、方向性が見えれば先に進められる部分もある。
ただし、雑に返しすぎると「結局どっちですか?」と確認のやりとりが増えて逆効果になる。50点でいいけれど、30点は出さない。この線引きは場数で覚えるしかなかった。
すぐ答えられないときは「いつまでに返す」だけ先に伝える
調査や社内確認が必要で即答できないタスク。これを無言で抱え込むのが一番まずい。「すぐには回答できないのですが、○日の午前中には返します」と一言送るだけで、相手の不安はかなり消える。そして自分にも期限ができるので、ずるずる先延ばしにしづらくなる。
相手が止めているときにどうするか
自分がボールを持たないように気をつけていても、相手が止めているケースはある。催促は必要だけど、やり方を間違えると関係がギクシャクする。
「催促」ではなく「確認」として聞く
「まだですか?」ではなく「○○の件、進捗はいかがでしょうか?」と聞く。これだけで受け取る印象がまるで違う。特にフリーランスの外注先は複数のクライアントを抱えていることが多いので、催促されること自体は珍しくない。聞き方の問題だ。
そもそも止まりにくい頼み方をする
相手がボールを抱え込んでしまうのは、多くの場合「どう返せばいいかわからない」からだ。これを防ぐには、最初の依頼時に4つを伝える。納期、完成イメージ(見本や参考画像)、作業範囲、そして「迷ったらここまででいいから出して」という基準だ。
特に最後の基準が重要で、これがないと相手は完璧を目指して時間を使うか、不安になって手が止まるかのどちらかになる。自分が上司から「50点でいいから返せ」と言われたのと同じ話だ。頼む側がその50点のラインを示してあげる必要がある。
「専門会社とフリーランスの比較」の記事でも書いたけれど、外注先が会社であれフリーランスであれ、コミュニケーションの基本は同じだ。「わからなかったら聞いてください」は、実はあまり機能しない。相手は聞きづらいから止まっている。先にこちらから情報を出すほうが、結果的にやりとりの回数も減る。
仕事の「見えない待ち時間」は思ったより高くつく
土曜日のメールの話で書いた通り、後回しにしたタスクには「再開コスト」がかかる。中断した作業をもう一度始めるとき、「どこまでやったっけ」「何の話だっけ」と文脈を思い出す時間が必ず発生する。
調べてみたら、ITの世界ではこれを「コンテキストスイッチ」と呼ぶらしい。もともとはコンピューターの用語で、CPUが別の処理に切り替えるときに発生するロスのことだそうだ。人間の仕事でも同じで、あるタスクを中断して別のタスクに移ると、元のタスクに戻ったときに「どこまでやったっけ」と思い出す時間がかかる。ある記事では、割り込み作業のあと元の作業に集中を取り戻すまで約20分かかるとも書かれていた。
外 コンテキストスイッチが生み出す生産性の低下 | Asana asana.com/ja/resources/context-switchingしかもこの再開コストは、自分だけの問題じゃない。自分がボールを持っている間、外注先もバイトも「返事待ち」で手が止まっている。相手にも中断と再開が発生する。自分が1日ボールを握っていたら、相手の1日も止めていたということだ。
見積もりの段階では「この作業は3日あれば終わる」と思っていても、途中で確認のやりとりが2回入って、それぞれ1日ずつ自分がボールを持っていたら、実質5日かかる。外注か内製かを判断するときに「外注は時間がかかる」と感じることがあるけれど、その「時間がかかる」の正体は、作業そのものの遅さではなく、やりとりの間に発生する待ち時間だったりする。
自分がすぐにボールを返すだけで、この見えない待ち時間はかなり圧縮できる。特別な仕組みやツールは必要ない。「来たら返す」を徹底するだけだ。