うちの会社のECサイト、商品画像は基本ブツ撮りだけで出品している。先輩がモールの担当者から「着用画像があるかないかでクリック率が全然違う」と聞いたらしく、気になっていたのだが、モデル撮影となるとモデルのギャラにスタジオ代にカメラマン代に…と予算の話になる。

「最近、AIで着用画像を作れるサービスが出てきてるぞ」と教えてもらったので、どんなサービスがあるのか、料金やスペックを調べてみた。いくつかは実際に触ってみた。

AIモデル着用画像サービスには2つのタイプがある

平置きやトルソーの商品写真をAIで画像加工して、モデルが着用している写真に変換するサービスがある。「AIモデル着せ替え」「バーチャルモデル」「AI着用画像生成」など呼び方はいろいろだが、やっていることは同じだ。大きく2つのタイプに分かれる。

ひとつは自分で生成するツール(以下「ツール型」)。ウェブ上で商品画像をアップロードして、AIモデルを選んで生成ボタンを押す。セルフサービスなので1枚あたりの単価は安いが、生成結果の出来は自分で判断する必要がある。

もうひとつはプロに依頼するサービス(以下「制作代行型」)。AIで画像を生成した後、写真編集やレタッチのプロが色味・質感・ディテールを補正して納品してくれる。仕上がりは安定しやすいが、料金は高くなる。レタッチを外注するのと似た感覚で依頼できるのが特徴だ。

ツール型6社の料金・スペック比較

2026年4月時点で確認できたツール型の画像加工サービスの料金とスペックを表にまとめた。料金は各社の公式サイトまたはアプリ内で確認したもの。

サービス 料金 出力サイズ 動画 日本語
heroshot
グラムス
無料:20cr/月(最大10画像)
プロ:¥780/月〜(年額・50cr〜)
1K
MODAAI
ANTIQUA AI
従量:1枚¥150
月額:¥6,800/50枚〜
4K ×
WearStudio.ai
ニュウジア
Starter:¥29,800/月(100pt)
Business:¥98,000/月(500pt)
Enterprise:¥198,000/月
Ultra 1.3K
SellerPic
ECOCREATE TECHNOLOGY
無料:10枚/月
$19/月(100枚)
$49/月(500枚)
4K(cr消費)
iFoto 年$59.4($4.95/月)
月$9.9
不明 ×
MaisonAI
AuthenticAI
ライト:¥150,000/月
スタンダード:¥300,000/月
1ヶ月無料トライアルあり
不明 ×

補足

heroshotは無料枠があるので試しやすい。SASAGE.APPと連携できる点も特徴。ただしプロンプト入力には対応しておらず、プルダウンで条件を選ぶ方式。出力が1Kしかなく、アスペクト比も16:9・9:16・1:1の3種類のみ。服のディテールが伝わるサイズではなかった。

MODAAIはアパレルブランド「antiqua」が自社のEC運営課題から開発したサービス。300種類以上のモデルから選べる。PNG・JPEG・WebPで出力可能。4Kで出力できるのはこの中では貴重だが、1枚の生成に数分かかった。

WearStudio.aiは複数のAIエンジン(Fast・Standard・Pro・Ultra)で同時に生成し、結果を比較して選べる仕組みが面白い。ただしUltraの出力サイズは1.3Kにとどまる。プロンプト入力には対応していない。

SellerPicは100人以上のモデルバリエーションがあり、アクセサリーにも対応している。入力画像は512〜2048px、平置き写真のみ。4K対応だがクレジットを追加消費する。日本語に対応しておらず操作画面が英語のみ。生成速度もやや遅い。

iFotoは試してみたが精度が出なかった。翻訳調の日本語でやや使いづらい。

MaisonAIは月額15万円〜のエンタープライズ向け。GPT-4o・Claude・Stable Diffusionなど9つのAIモデルを搭載したプラットフォームで、着せ替え(Try-On)はその一機能。EC担当者が個人の判断で契約する価格帯ではない。

制作代行型5社の特徴と料金

制作代行型は「AIで生成した後に、写真編集・レタッチのプロが補正する」のが共通点。レタッチ会社やAI専業の制作会社が参入している。料金は大半が個別見積もりだが、1社だけ料金を公開している。

AI model

AI model株式会社が運営。MidjourneyやStable Diffusionは使わず、完全自社開発のAIエンジンで生成していると公表している。三越伊勢丹のMIオンラインストア専属モデル、しまむらのAIモデル「瑠菜」、伊藤園のTV CMなど、大手の導入事例がある。2025年8月にはささげ業務(撮影・採寸・原稿作成)向けのAI動画生成サービスも開始。料金は個別見積もり。

URL:ai-model.jp

フレンセル(AI × RETOUCH LAB)

札幌の株式会社フレンセル(2001年創業)が運営する写真編集・レタッチの専門会社。IS事業部に20年以上の実績がある。AI生成した画像をプロのレタッチャーが色味・質感・トーンを補正して納品するハイブリッド型。アパレル・コスメに対応。2026年2月に正式リリース。料金は個別見積もり。

URL:gen-zo.com/ai-ret/

写真加工屋さん

AI生成後にプロのレタッチャーが補正して納品するタイプ。トルソー写真や平置き写真からモデル着用画像に変換する。7つの制作メニュー(オリジナルモデル生成、トルソーのモデル化など)があり、ブランドのターゲット層に合わせたモデルの雰囲気設計から対応。料金は個別見積もり。

URL:shashinkakouyasan.com/ai-model/

AI/AD MAKERS(JPC社)

東京・京都にスタジオを保有。ポーズや表情を変更してもモデルのアイデンティティが崩れないのが売りで、ささげ業務の撮影からAI合成、広告バナー、SNS運用までワンストップで対応。この5社の中で唯一、料金を公開している。

10商品の着用画像を作ると、撮影費+合成費+モデル契約で最低¥140,000〜になる計算だ。

URL:ai-admakers.jp/price/

VueModel(ブロードメディア・テクノロジー)

3Dモデルライブラリから多人種・多体型のモデルを選べる。マネキン・ゴーストマネキン・ハンガー・置き撮りなど様々な入力に対応し、バッグやジュエリーにも使える。料金は個別見積もり。Webサイトに掲載されているサンプル画像が小さく、無料お試しも見当たらなかった。

URL:tech.broadmedia.co.jp

生身のモデル撮影と比べてどうなのか

ツール型の料金を調べていると、1枚¥150〜で着用画像が作れるなら生身のモデルを使うより安いのでは、と思った。先輩にそう言ったら「単価だけで比べるな」と返された。

生身のモデル撮影の料金例

AI/AD MAKERSのように合成1点¥5,000に撮影費が別途かかるサービスもあるが、ツール型なら1枚¥150〜で生成できる。単価で見ればAIの方が安い。だが先輩が言いたかったのは、「メリットは単価だけじゃない。周辺コストがまるごと消えるのがでかい」ということだった。

ただしツール型には弱点もある。1枚ずつ画像をアップロードして生成結果を確認する作業を、商品の数だけ繰り返す必要がある。商品数が少ないうちはいいが、数十点・数百点になると作業時間がかなりかかる。その分の人件費を考えると、単価の安さだけでは判断できない。

もうひとつ、生成崩れの問題がある。袖の形が変になる、ボタンの数が合わない、首回りが不自然になるといった崩れは普通によく起きる。崩れた画像を画像加工ソフトで手作業で直すのも手間がかかるし、生成に失敗してもクレジットは消費される。何度もやり直すと結局コストが膨らむ。

商品点数が多かったり、崩れのない仕上がりが必要な場合は、レタッチ外注と同じ感覚で制作代行型のサービスに任せた方が結果的に効率がいいかもしれない。

AIモデルにすると消えるコスト

ただし、この「商品を動かさなくていい」というメリットが効かないケースもある。物流会社にささげ業務ごと委託している場合だ。商品がすでに倉庫にあるので、モデル撮影のために商品を別の場所に送る必要がない。トミーズやオープンロジのような物流企業がモデル撮影込みのささげ業務の代行を安く出せるのは、この物流コストがゼロだからだと先輩は言っていた。

結局、AIモデルが合うのはどんな事業者か

先輩の話を整理すると、自社の状況によって3つのパターンに分かれる。

1. 物流会社にささげ業務ごと委託している場合

商品が倉庫にあるので、モデル撮影を含めた外注コストがもともと低い。わざわざAIに切り替えるメリットは薄い。

2. 自社で在庫を持っていて、モデル撮影のたびに商品をスタジオに送っている場合

商品の発送・返送コストと、モデル・スタジオの手配の手間がまるごと消える。ブツ撮りの画像データだけ渡せばいいので、AIモデルの恩恵が一番大きいパターンだ。

3. SKUが多くて、全商品にモデル着用画像を用意しきれていない場合

予算やスケジュールの都合でブツ撮りしか出せなかった商品にも、AIでモデル着用画像を追加できる。全商品にモデル画像を付けられれば、クリック率の底上げにつながる可能性がある。

自分の会社がどのパターンに当てはまるかを先に整理してから、サービスを選んだ方がいいと思う。

よくある質問

AIで作ったモデル着用画像はECモールで使えますか?
Amazon・楽天ともに、2026年4月時点ではAI生成画像を明確に禁止するガイドラインは出していません。ただしAI生成であることの開示ルールが今後整備される可能性はあるので、出品先のモールの最新規約を確認してください。
出力サイズが小さい場合、アップスケーラーで拡大すれば使えますか?
AIアップスケーラーで拡大は可能ですが、もとの生成画像に含まれていないディテールは復元されません。1Kの着用画像を4Kに拡大しても、服の織り目やボタンの質感までは再現されない。それだけでなく、自分の経験ではアップスケールするとAI特有の不自然さがかえって目立つようになった。せっかく自然に見えていたモデル画像が、拡大した途端にAI臭くなる。最初から必要な解像度で出力できるサービスを選んだ方が確実です。
AIモデルと生身のモデル撮影、どちらがコストを抑えられますか?
基本的にはAIモデルの方が安くなります。ツール型なら1枚¥150〜で着用画像が作れます。さらに単価以外にも、モデル代・スタジオ代・ヘアメイク代・ブッキングの手間といった周辺コストがまるごとなくなるのが大きいです。ただしAI/AD MAKERSのように合成1点¥5,000+撮影費別途というサービスもあるので、依頼先によっては生身のモデル撮影と変わらないケースもあります。